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演奏会の夜2

2014.01.20 (Mon)

「食事の席も先輩が予約してくれてるんだって?」
主人が、あきらさんに何て言っているのか、図りかねているうち、
スマートな振る舞いで私の腕をとると、立ち上がったんです。  

少し歩いたところにある、ホテルの展望レストランは、
四人掛けのテーブルが設えてある個室。
主人たら、私が彼に抱かれる手はずを、どんな気持ちで整えたのかしら。
北陸の古都の見事な夜景を眺めながら、
品の良い方から持ってきていただいた、美味しいデイナーの時間を楽しみましたが、
もしかしたら今夜、あきらさんに抱かれるかと思うと、喉を通らないわ。

フルコ~1

デザートとコーヒーが終わると、後はアルコールの時間。
もう、お店の方は、入っては来ません。
見慣れたはずなのに、今夜の夜景は、息が詰まります。
その気持ちを、払うようにして目を移すと、
丁度、コース料理の最後だったジェラートの一片を、
口に運ぶところでした。
白いクリームが、唇の片方についていたのを、
私が指でなぞって、自分のお口で舐めてあげると、
彼、照れくさそうに、笑顔を返してくれたんです。
「先輩には悪いことしたよね、便宜を図ったっていっても、
仕事だから当たり前なんだから、食事おごってもらって、本当に申し訳ないなぁ」
と、くったくない様子で、ナプキンを使ったのです。
けれど、その後の低い声に、私は慌てて目を伏せました。
「部屋がとってあるから、昔みたいに、ね」

人目があるからと、
先に、部屋に行っているとのこと。
一人になった私は、もう一度、古都の夜景を暫く眺めていました。
取り返しのつかない夜になるのかもしれない。
それも、主人の求めるがままに。

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エレベーター中では、
ひんやりとした静寂な空気が身体を包みます。
彼と過ごす部屋の階のボタンを押せば、
彼の恋人としての、ただならぬ一夜を過ごすことになるのです。
私は、もう一度小さな吐息をつき、ゆっくりとボタンを押したのでした。

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部屋に入るなり、案の定、強く抱きしめられ、
端正な顔が近づいてきたんです。
そして、懐かしい唇が、自分の唇にそっと重なることを拒めませんでした。
まるで、彼の唇のために、つくられたような私の唇、
しっとりと、隙間なく重なり、
最後に頂いた、ジェラードの味がしたような気がしました。
間もなく、彼の熱い舌は私の唇をゆっくりとなぞりながら分け広げると、
私の舌を探しに滑り込んできたのです。

1873-12s.jpg

彼の胸に両手を当てて、
それ以上のことから僅かに逃げようとしたんですが、
それよりもすこしだけ強引な彼の舌が、先に私の舌を見つけ、
そして、上手に絡み合い、そして、強く吸われると、
私の両手は、彼のものをもっと求めるようにして、
その背中に回されていったのです。
ごめんなさい、パパ。、
でも あなたがいけないのよ。


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