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筆おろしの夜3

2014.03.30 (Sun)


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何杯かカクテルをお代わりしたせいか、
私はきっと、少し虚ろな眼差しになっていたと思います。
もう、帰らなくっちゃ。そう、思っていました。
けれど、薄暗い部屋の隅では、先生と葵さんが、誰も歌わない曲を伴奏にして、
抱き合うようにして踊り始めていました。
葵さん、先生の肩に顔を寄せて、
あら、先生の手、葵さんに胸に当てられているんじゃないかしら。
えっ! 葵さん、良いの?
でも、葵さんも、嫌がりもしないで、気持ちの良いような表情。

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ちょっと、驚いていた私に、先生、
「順子さん、すいませんね。暫く、葵さんお借りしますね。
 研一は、連絡するまで、ホテルの部屋に、来るんじゃないぞ」

ええ! それって、どう言う事?
それに、葵さんたら、
先生の首に両手を回して、ぶら下がるようにしてるし。
「順子さん、研一のやつ、まだ、女性を知らないんですよ。
 良ければ、卒業祝いに、お願いしますね」
そう言うと、葵さんの腰に手を回すと、二人で仲良く部屋を出て行ったのでした。

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酔いもあったのでしょうね。
研一君の身体が、私の身体に触れるほど隣に来ていたことに、
私、その時、やっと気がついたんです。
そして、肩に回されていた右手が、段々と下がってきて、
とうとう、私の腰に回されてきたんです。

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けれど、それほど、嫌な気もしなかったし、
先生が言ったようなことにはならないだろうと、そう思ってました。
ですよね。こんなところで、
彼の始めての女性に、私がなるなんてこと、あるはずないんだから。

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女性との経験のない男の子に、
始めての女性とのことを自分の身体を使って教えることを「筆おろし」って言うんでしょ。
随分と昔、主人に言われたことがあります。
若い子の相手をしてあげるのも、ベテラン女性の務めだって。
いつか、そんなことがあるかもしれないけど、
報告してくれれば、かまわないからって、そんなことも言われていたのでした。


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