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犀川のほとりで

2021.07.26 (Mon)


許してもらったよし君とのデート。
夫は、どう思っていたのかは、わからないまま、その日を迎えました。

勤めのはなかった日の午後、
私は自宅から、よし君は仕事先から、
それぞれが約束していたお宿に向かうことになっていました。
初めてお邪魔する有名な割烹旅館で、
二人で夕食を楽しむだけにしては、ちょっと、贅沢すぎるって、思いましたよ。

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知っている人がいたら、困るわって思っていましたが、
幸い、離れになっていて、
目の前を流れる犀川を、その僅かなせせらぎの音と一緒に、眺めることができたんです。

「お連れの方からお電話があって、
少し遅くなるから、お湯を使われていてくださいとのことでした」

本当は、着物で来てもよかったんですけど、
余りにおめかししていくと、主人に悪いだろうと思って、お洋服にしてました。
でも、ご飯食べるだけなのに、お風呂って、それって、おかしくないのかしら。
あぁ、犀川を見下ろせる、露天風呂があるのね。川床のようで気持ち良さそう。
よし君、遅くなるんだったらって、お風呂いただくことにしたんです。


勤め先の同僚と、夕食を一緒に、って、表向きはそれだけだけど、
その同僚の若い男の人であるよし君と、人妻であるはずの私、
人にはお話しできない、
男の人と女の人、互いの性器をしっかりと繋げあい、
お互いの体液を求めあった関係を持ち続けていたこと、
先ほどの仲居さんにも、想像できないですよね。
そんなことを思い、お湯を胸に掛けながら、小さな吐息を漏らしたのでした。

犀川の向こうの山際を、少しづつ、薄い茜色の夕日が染め始めようとしていました。

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目の前に広がる、贅沢なお食事。どれも、地元の私には珍しいものではありませんでしたが、
それぞれが、工夫されていて、美味しかったはずでした。
けれど、思いもかけず、さっき、抱きしめられたこともあって、胸がいっぱいだったんです。
そんなつもりで、ここに来たはずではなかったのに、
そんな時間が流れ出してしまっていること、
自分にもわかりだしていたのでしょうか。

「あの時のカメオ、でしょ」

そう言われて、そっと頷きました。
それは、よし君と別れ間際の夜、彼からいただいた、高価なブローチだったんです。
覚えてくれているのかなぁ、そう思いながら、今日、付けてみて来てたんです。

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カメオの思い出は、こちらからどうぞ

美味しかった食事を終え、久谷焼きで揃えられていた素敵な食器が引かれ、
「御用があったら、内線でお願いします」
そう言って、仲居さんがいなくなってしまうと、
湯気の立つ、二組の茶器と、言葉数の少ない二人が残りました。

「せっかくだから、お風呂、入ってきますよ。一緒に、どうですか」
「駄目よ、そんなこと」

でも、さっき自分が入った素敵な露天風呂、
それは、よし君にも、楽しんでもらいたいものだったんです。

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14:35  |  よし君とのこと  |  Trackback(0)  |  Comment(4)
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