マスカレード3
2019.10.26 (Sat)
薄暗いと言ってもいいような、広い玄関ホールで靴を脱ぎ、
そこに待っていた、白いバスローブを羽織った、
そして、素敵な仮面を付けた女性に案内された先は、
白い壁のバスルームでした。
Tさんは、どこか違うお部屋に行ったみたいで、
なぜだか、彼女の仮面の唇に、意味ありげな微笑みが浮かんだ気がしたんです。
バスタオルとその上に乗せられた、布のできた黒いレース仕立ての仮面を渡されて、
促されるがままに、シャワールームに入りました。
シャワーを終えて、着替えようとすると、さっき脱衣場のカウンターに置いたはずの、
小さなトラベルバッグと、そして、脱いだはずの下着が見当たらないので、
仕方なく、素肌の上にバスローブを身にまといました。
「あぁ、バッグと下着は、お部屋に運んでおいたわ。
あぁ、ほら、仮面つかないと、知らない人に、顔、見られちゃうわよ」
バスルームからのドアを開くと、薄暗い廊下に、彼女が待っていてくれて、
そんなことを言われながら、ちょっと強引に手を引かれたんです。
確かにレース仕立ての仮面を付けると、
えぇ、なんだか、自分ではない気分にはなったんですけど。
何も尋ねられませんでした。彼女に誘われるがままに、反対側のドアを開き、
背中を押されるようにして、薄暗い部屋の中に入ったのでした。
「Tさん、どうしたのかしら」
遥か眼下にきらめく神戸の街の灯を見下ろす、広いガラスのお部屋、
その手前に素敵なテラスも見えていましたが、
薄墨が広がっているような部屋の中には、
僅かな光だけが広がり、背もたれの高いソファーや柱の陰のために、
この部屋で、今、何があってるのか、直ぐにはわかりませんでした。
けれど、時折、やるせない女性の細い声が漏れ聞こえ、それに誘われて目を凝らすと、
大きな観葉植物の広い葉の向こう側に、男の人の上にまたがり、
下から延ばされた手から胸を揉まれ、いやらしく腰を揺らしながら、
喉を逸らせている白い裸の女体が見えたんです。
狼狽えて声を失った私のこと、
傍らの上質なソファーに、抱き寄せるようにして座らせた彼女、
座り終えるまもなく、バスローブの重ねの前から、手のひらを差し入れてきました。
「この部屋では、自分が人妻ってこと、忘れるのよ」
そう言うと、私の髪を分けて、熱い息を吹きかけながら、ゆっくり乳房を揉み上げ、
もう、硬くなりかけだした乳首を、柔らかく摘まんだんです。
思いもかけない桃色の快感に、思わずくちびるを開いて仰け反った私、
けれど、その口に、ねっとりとくちびるが重ねられると、舌先に開かされた口の中に、
どろりと、何かしら甘い液体が流し込まれました。
「さぁ、もっと飲んでね、恐ろしいくらい、何度もいけるから、
きっと、あなた、今夜、失神するわ」
嫌がっても良かったはずなのに、丹念に胸、揉まれながら、何度もそうやって、
口移しに、その液体飲まされたんです。
なにも拒まないまま、バスローブの前がだらしなく開かれ、
それまで這いまわっていた乳房から、彼女の細い指先が、這い下りてきて、
恥毛を分けながら、
もう溢れるほど愛液を滴らせようとしている私の秘唇に滑り込んでくると、
同性である彼女の、快感の糸口を開く巧みな指使いと、
口移しで飲まされたあのお酒のせいでしょうか、
ほんの幾らもしないうちに、思いもかけないほどの強い悦びの麻痺が、身体を走り抜けました。
幾らもしないうちに、私の身体の中に滑り込んでいた指が二本に増えると、
拒むこともなく、それまで以上の悦びを求めて、
その指をもっと深く迎えるために、自分から太ももを開いてたんです。
喘ぎの治まらないくちびるに、ねっとりと彼女の濡れたくちびるが重なってきて、
また、どろりと甘い液体が注がれると、
むしろ、私の方から、彼女のくちびるに吸い付いていたようにも思えたんです。