2ntブログ
07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

雪まつりの夜2

2017.08.31 (Thu)


ふらふらとした身体、翁先生に、抱きかかえられるように入ったお部屋。
ドアが閉まると同時に、
なぜだか、日頃は匂うことのない、懐かしい良い香りを感じました。
けれど、以前、どこで匂ったのか、その時は、思い出せないままだったのです。

437ba65c563f8cc881471244d6ec2f5b.jpg

テーブルの上には、ホテルにしては高価だと思えるお茶がおいてあったけど、
普通のポットからだから、熱すぎるかなぁって思い、
余分な湯飲みを湯冷まし代わりにして、冷ましながら、お茶入れましたよ。

けれど、その間に、
さっき感じていた、思い出せない匂いが、
私のこと、包み始めていたのかもしれません。

070601_l.jpg

ソファーに座り込んで、天井を見上げている翁先生の前に、
湯飲み、そっと置くと、先生、自分のすぐ傍の座面を、ぽんぽんと手でたたいたんです。
私、誘われるがまま、腰、降ろしました。

girisya1.jpg

一日、一緒だったから、自然にそんな風に、できたんでしょうね。
頂いたお茶、思ったより美味しかったです。

「あぁ、久し振りに、君が入れてくれたお茶、やっぱり、美味しいね」

そんなふうに言ってくれた翁先生、
でも、なぜだか、そのうつろな眼差しは、
お部屋の中、天井の方に向けられていました。

chumoku_photo03.jpg

私、湯飲み、そっと、テーブルに戻すと、それを待っていたように、
自然に、腰、抱き寄せられ、
浴衣越しに、先生の手のひらの温もり、感じられると、
酔いも手伝ったんでしょうね、なんだか、ぼぉってしちゃったんです。

「楽しかったね」

誰に向けられたいたのか、そう言った先生の掠れた朧げな声、
けれど、なぜだか、随分と遠いところから聞こえたような気がして、
思わず顔を上げると、なんだか、部屋の中、
先ほどの匂いと一緒に、微かな薄紫色のもやのような大気が、
ゆっくりと、満たしだし、私の身体を包み始めたことに、
気が付いたように思えました。

437ba65c563f8cc881471244d6ec2f5b.jpg

頭の中にも、ゆっくりとおぼろな霧が漂ってきましたが、
どうしてだか分からないまま、
求められもしないのに、先生の身体に、しな垂れかかってしまったのです。

お酒の酔いや、旅の疲れからの睡魔が襲っていたわけではなかったのに、
なぜだか、すっかり、もうろうとしてたんですね。

そんな私の耳元に、温かな吐息と一緒に、先生の低い声が響いたような気がしました。

「あぁ、そのイヤリング、付けてきてくれてたんだね」

何のことかわからないままの私だったはずなのに、
驚いたことに、聞いたことのない細い声が、なぜだか、私の口から洩れていました。

「えぇ、そうよ、あの時、あなたが、イスタンブールで買ってきてくれたのよ」

01091741_52ce60b0e44be.jpg

もう一度、肩、抱き寄せられると、
温かな手のひらが、浴衣の胸元に、当たり前のように差し込まれ、
ブラと素肌の間に入り込んできたような気がしました。

乳房、ゆっくりと、その柔らかさを味合うように、優しく揉まれると、
私、それまで以上に、もうろうとしてしまい、
手を引かれ、熱く太い男の人のもの、握らされたと思った時も、
なぜだか、何の抗いもしませんでした。

9708b51b-s.jpg

それどころか、いくらもしないうちに、
自分の方から、身体を倒しかけ、その固いものにくちびるを寄せたように思えたのです。

18.jpg

「じゅんこ」

そう、曇った声、聞いたように思えたと同時に、なぜだか、私、
当たり前のように、大きく頷いたように思えました。

けれど、それは、微かな薄紫色の夢の中で起こった、
現実とは思えない、夢の中の、不思議な出来事のようにも思えたのです。

070601_l.jpg



まだ、夜は明けきれない時間だとは思いましたが、
カーテンの隙間から、うっすらとした朝方の光が差し込んでいました。
寒い札幌のはずなのに、温かなエアコンのお陰で、
きっと、私、幸せな顔をして、目を覚ましたのだろうと思います。

けれど、はっとして、胸元に手を当てました。
はっきりとは思い出せないけど、ふしだらな夜だったような気もして、
自分の浴衣の身体を見直したんです。

56a5b4b0cf49e3aedf94d84d91f6d17d-630x822.jpg

けれど、はだけていると思えた胸元も、そして、裾回りも、
しっかりと昨夜のままのように重なっていました。
けれど、不思議なことに、あの少し透ける、黒いブラとショーツも、
すぐ近くのソファーの上に、丁寧に畳んで置いてあったのでした。

そして、隣のベッドには、まぎれもなく、翁先生がお休すみになっていて、
規則正しい微かな寝息が、聞こえてたんです。


私、もう一度、昨夜のこと、思い出そうとして、
ゆっくりと身体を横たえたのと同時に、
僅かばかり雲が、朝の光を遮ったのでしょうか。

部屋の中にうっすらと差していた淡い光、急に途絶えると、
誰だったのでしょうか、頭の中に、微かな声、聞こえたような気がしたんです。

「ありがとう 主人のこと、お世話していただいて」

そして、その時になって分かったんです。
頬を、温かな涙が、伝い流れていたことを。

そして、あの、思い出せない不思議な匂いが、
また、昨日の夜の時と同じように、
自分の身体、そっと、包んでいることに、気が付いていたのでした。

437ba65c563f8cc881471244d6ec2f5b.jpg


関連記事
15:42  |  「順子の日記」  |  Trackback(0)  |  Comment(2)
 | HOME |  NEXT