佐渡での数日2
2017.01.26 (Thu)
「ねぇ、暑いわ、シャワー使わせてね」
糸の引くようなくちびる、やっと、離すと、喘ぎを残しながら、そう言いました。
けれど、部屋の中には、心地よいエアコンが効いていて、
私自身が乱れていること、取り繕うための嘘だって、分かったかもしれませんね。
それに、教えてあげるはずの自分が、こんなに乱れてしまって、
彼の初めての女性になるために、
彼の思い出に残る女性の身体を開くために、滲み出した愛液を流して、
清潔な身体でいたい。きっと、そう、思ったのかもしれません。
下着を脱ぐと、バスルームの広い鏡に、何も身に着けない自分の姿を映しました。
喜んでくれるかしら、この私の身体を。
エステに通って磨き上げた、透き通るような白い肌、
たわわな乳房、薄桃色の可愛らしい乳首、よくくびれた腰、そして、柔らかな太もも。
彼にとって初めての女性になるこの身体、
本当に、私で良かったと、やっぱり、思って欲しかったのです。
ドレッサーの鏡の前で、お化粧直しをしていると、
バスルームから出できた研一君、
少しだけ荒い目のレースのカーテン越しに、淡い日差しの射しているベッドに、
下着をつけていない、上質な浴衣を羽織っただけの身体、ごろりと横になりました。
冷蔵庫から出していた良く冷えたスパークリングワイン、
細いお洒落なグラスに注いで、持って行ってあげましたよ。
「あぁ、美味しい」
そう言って飲み干したグラスをベッドサイドのチェストに置くと、
そのまま、私の肩、抱き寄せてきたんです。
「もう、我慢できないんです」
帯をしていない浴衣の重ねがずれると、
あの夜に、私の手のひらの中で脈打ち、驚くほどの量の彼のしるし、噴出した男の人のもの、
あぁ、まるで、怒っているように、太く膨れ上がった姿、見せたのでした。
何か言わなくてはって、思いましたが、
そんな彼のもの、見せられた私自身も、もう、我慢できなくなっていたんです。
「ごめんなさいね、赤ちゃん、大丈夫な時じゃないから」
そう言って、隣のベッドの上に置いてあったハンドバッグの底に隠していた小さな箱から、
スキン、ひとつだけ手にしたのでした。
あかちゃんのこと、大丈夫な日とも、そうでない日とも思える、微妙な時期でしたが、
きっと、初めての営みを迎える彼のことだから、
我慢できないまま、そのまま、私の身体の奥に注いでしまう心配があったから、
やっぱり、持ってきたんです。
「お口で付けてあげるからね」
そう言って、袋を破り、スキン、お口に入れようとしたのに、
彼ったら、ひどく、悲しそうな顔をして、
「順子さんが、初めてだから、最初は何も付けないで、ひとつになりたいんです」
「あぁ、それは分かるけど、でも、…」
「大丈夫だから、危なくなったら、外に出すから」
若いおびただしい量の、彼の男の人の熱い液、
そのことを思った途端、諦めたように熱い息、ひとつ吐くと、
なぜだか、手にしていたスキン、チェストにそっと置いたのでした。
男の人にとって、女の人との経験って、本当の卒業って、
もちろん、身体を繋げ合うことだろうと思うんですけど、
やっぱり、自分の男の人の大切な液、何もつけないまま、
相手の女の人の、身体の一番奥に注ぎ終えることだとも、そう、思えたんです。