小舟の行方2
2017.09.22 (Fri)
「堪らないんだ、順子の身体、思い出すと」
「いや、もう、忘れてくださいね」
「ちょっと、待って。あの時の順子とのこと、思い出してもらうから」
暫くすると、電話、ブルブルって震えて、
画像が送られてきたことがわかったんです。
恐る恐る開いてみた写真、
あぁ、それは、ふたりが身体を繋ぎあった彼の別荘で、
幾度とない悦びのために朦朧となった時、
足元に準備されていたカメラで撮られてしまったもの。
見直す必要もなく、ふたりの愛液と精液に濡れた性器が、
これ以上はないほど、しっかりと繋がり合っている姿だったのです。
それも、目を逸らすほど、嫌らしい格好で。
「嫌ぁ、困るわ」
上ずった声で、やっと応えた私、
手をあてがった、うすいブラウスの胸元が、幾らかの喘ぎのために、
膨らんでうろたえたそんな私を、まるで、見透かしたように、
「大丈夫な時なんだよね」
「えっ!」
彼の言葉の意味、すぐに察した私、
あぁ、どうして、そんなことを知っているの。
「教えてくれたんだ」
えっ 夫が彼に、そんな恥ずかしいこと、言ったの、
それって、ふたりが過ごす時間が、どんな時間になるのか、
夫が許したってことなのね。
それも、最後は、彼が望むままにしなさいってこと?。
「楽しみにしてるよ、順子。
今夜は、僕のこと、思い出しながらおやすみ」
傍らの東屋の柱に手を添えました。
軽いめまいを感じ、両足から力が抜けそうだったのです。
けれど、その時になって、
自分の身体が熱を帯び、薄っすらと濡れようとしているのに気が付きました。
遥か遠くからの、彼の声だったはずなのに、
その誘いの声に、素直に応えようとしている自分の身体、
恨めしくも思えたのでした。
吐息をもらし、見上げた虚ろな眼差しの先には、
さっきまでいた貴船神社が、映りました。
あってはならないTさんとの約束。
思いもかけない復縁は、神様の戯れだったのでしょうか。
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