地中海旅行11 ヘブン
2016.10.05 (Wed)
客船には、フォーマル船とカジュアル船があって、
それぞれの船のエリアや時間でドレスコードが決められているようです。
私たちが乗った「ノルウェージャン・エピック」は、全体に比較的緩やかで、
短パンや運動靴では入れないレストランもありますが、
ネクタイ着用は自由なエリアが多かったです。
厳密な船のフォーマルのエリアと時間帯だと、
男性はタキシード、女性はロングドレスか、日本人なら着物が普通で、
そうなると、トランクの数も変わってきますよね。
その日、Nさんたちご夫婦に、連れて行ってもらった「ヘブン」エリア。
一般的なところとは違って、しっかりと、ドレスコードがあって、
主人は、旅行前に慌てて買ったタキシード、
私は、おねだりして買ってもらった、
背中が大きく開き、こぼれるような胸のふくらみが、
ちょっと恥ずかしい、薄紫のロングドレスで行くことになりました。
「ヘブン レストラン」は、ヘブンエリアのお客様専用のレストランですが、
だんな様の計らいで、私たちも同席させていただきました。
一般のレストランも、悪くはないんですけど、
流石にここでは、テーブルの上のナイフやフォークの重さの他に、
絨毯やカーテンに至るまで、
随分と格の違いを感じるところがありました。
「お二人にお逢いできたことに、乾杯」
ワイングラスを鳴らして、だんな様の音頭で始まった食事も、
本当に、有名なレストランでの時間以上に、とっても、素敵だったですよ。
「順子さんのドレス、素敵だわ。外国の女優さんみたい」
「あぁ、特に胸元がいいね。裸の胸、想像しちゃうな」
「またぁ、駄目よ、そんなお話」
けれど、だんな様の視線、こぼれるように開いて、ふくらみを見せている私の胸から、
それることはありませんでした。
「ご主人がうらやましい。この美しい身体、独り占めなんだから」
「えぇ、それはそれで、嬉しんですけど、
いろいろな男性が、群がってきそうで、気が抜けないんですよ」
私、恥ずかしくて、デザートのケーキ、少し残すと、
ケーキナイフ、そっと、お皿に置いたんです。
「だったら、私も、群がらせてもらおうかなぁ」
「あなた、ほら、順子さん、困ってるでしょ」
そんな、屈託のない楽しい話題とお料理、
そして、飲んだこともない、高級なワインの味に、
素敵な夜が更けていったのです。
誘われてついていった、Nさんご夫婦のお部屋。
私たちのところとは、広さも設備も、随分と違っていました。
バルコニーからは、階下に広がる船上甲板のプールや、
思い思いに夜の時間を過ごしている、沢山のお客様の様子が見えて綺麗でしたよ。
「素敵だよ」
思いもかけないだんな様の低い言葉に、思わず振り返ろうとしましたが、
その時には、もう、首筋に、唾液を感じるだんな様の温かなくちびるが、
ゆっくりと、這い回りだしていたのです。
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