地中海での思い出4 ワルツ
2016.11.28 (Mon)
「奥様をダンスに誘いたいんですけど、よろしいかな」
頭の上で、そう、Nさんの低い声が聞こえたんです。
「えっ、ええ、どうぞ。お願いします」
「駄目ですよ、私、何にも踊れないんですよ」
「何、こういったところじゃ、別に、上手に踊れなくてもいいんだから」
「踊っておいで、僕は、かまわないよ」
「さぁ、ご主人の、お許しいもただいたし」
だんな様、そう言うと、私の手を取って、ダンスエリアに、誘ったのでした。
駄目、今夜は、パパとの大事な時間だからって、そう思ったのに、
やだぁ、パパったら、
向こう側のテーブルで、小さく手を振ってる奥様に気づいて、
私のこと、振り返りもしないで、腰を上げてたんです。
「ほら、もう、他人じゃないんだから」
腰を抱き寄せられ、首筋に触れるように近づいた唇から、
だんな様の熱い息が、そう、言ったのでした。
10人ほどの楽団の方たちが、演奏されたのはワルツ曲のメドレー、
あぁ、これなら、なんとか踊れるわって、思ったけど、
そんなこと、だんな様には、関係はなかったのかもしれませんね。
ダンスフロアーには、10組ほどの方が、
それぞれのお相手と、楽しみながら踊られていて、
時々、お隣のペアと身体が触れるほどでした。
まぁって、ほれぼれするほと、上手なペアもあったし、
そうではないペアもあったし、
でも、クルーズでのダンスだから、お二人が楽しめればいいんですよね。
でも、ちょっとって、だんな様、身体、くっつけ過ぎ、
ドレスコードはなかったけど、
柔らかい生地のフォーマルな、
真っ白なワンピースだった私のスカートの間に、
だんな様の膝、何度も、差し込まれてきて、
あぁん、駄目。
それまでよりも、お店の明かりが暗くなって、
やだぁ、求めもしなかったチークタイム。
お約束のように、だんな様、頬、寄せてきたんですよ。
「忘れられないんだ、君の身体が」
熱い息が耳元を這い、身体の芯に、ただならぬ熱いものが、
流れ出したように感じました。
「いや、忘れてくださいね」
震えるか細い声で、やっと、そう言ったのに、
「あれほど、僕のもの、欲しがってたじゃないか」
「あぁ、許して」
「ほら、今だって」
そう言う前から、だんな様の膝、
私の柔らかいスカートの間に、挿し入れられて、
こすりつけられると、押し付けられるように動いて、
私、思わず、だんな様の背中に、手を回してしまったのでした。
あの夜のことが、蘇ってくるようでした。
大好きな夫が、同じ船の中にいるというのに、
その夫が、連れてきてくれた、大事な旅行だったはずなのに、
お逢いして、幾らも経たないだんな様に抱かれた、
恥ずかしい夜を過ごしたのでした。
開かされた白い太ももの付け根の秘唇にくちびるが這い回り、
夫以外には見せてはいけない、
私の一番恥ずかしい女の秘唇から滲ませてしまっていた愛液を、
思うがままに吸われ続けられました。
そして、恐ろしく太い男の人のもので、身体を繋ぎ合い、
数え切れないほど、悦びの頂に、昇り詰めさせられたのです。
二人の愛液で濡れただんな様のもの、抗いもしないでお口に含むと、
名残の液、泣きながら啜っていました。
その時の私、まぎれもない、だんな様の愛人だったのでしょうね。
そんな、あの夜の時間、
人妻であるはずの私なのに、今、身体を寄せ合い、抱きしめられながら、
取り返すことのできない時間を、もう、仕方なく諦めるしかなかったのです。
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