披露宴の夜6
2018.09.03 (Mon)
随分前に、途中で終わっていた「披露宴の夜」
いつも以上に、恥ずかしい出来事だったので、
このまま、続けないでおこうとも思っていたのですが、
せっかくなので、UPしたいと思います。
「披露宴の夜」1~5は、こちらからどうぞ
太ももに、何か、違和感を感じて、うっすらと目を開きました。
ストッキングの上からでしたが、太ももの付け根に近いところを、
彼の右手の手のひらが、ゆっくりと、摩っていたのです。
「あらっ 駄目よ、そんなことしちゃ」
でも、そう言うのが、やっとでした。
ワインの酔いに、彼との恥ずかしい時間、思っていたせいでしょうか、
身体、熱くなって、そして、しっとりと潤んでいたんです。
「ほらっ!」
ふいにそう言うと、彼、私を抱えるようにして、
お店のドアのところまで、連れて行ったんですよ。
「あらっ、どうしたの?」
「うん、順子さん、調子悪そうだから、ちょっと」
「大丈夫?私、介抱しようか?」
「あっ、いいよ。僕の責任だから」
「ほら、ホールのところに、有料の多目的のお手洗いがあるから」
「ああ、そうするよ」
遠い遥かむこうで、二人の会話が聞こえているような気がしました。
気持ちが悪い訳ではありませんでしたが、
大げさに言えば、意識がはっきりとしていない状態でした。
やっと、たどり着いたエレベーターホールの角に、お手洗いのスライドドアがあり、
抱きかかえられるようにして、私、
彼とふたり、重なるようにして、入っていったのです。
「あらっ、二人、さっきから、どこ行ってたの」
「えっ、あぁ、順子さん、飲みすぎたって言うんで、ちょっと、介抱してたんだ」
「まぁ、大丈夫ですか」
「えぇ、なんとか、良いみたい」
「ワイン、飲ませすぎたんでしょ、何か、魂胆があったんだ」
「いや、別にそんなつもりじゃなかったんだけどね」
有料の多目的な洗面所に入って、暫くして戻ってきたお店、
相変わらず賑やかで、皆、元気に飲み続けていました。
さっきと、同じソファーに、並ぶようにして腰を降ろしましたが、
私、恥ずかしくて、彼の顔と、見合わせることできませんでした。
スクランブル交差点を渡る歩行者の人々の目、
見上げるような二階にあるお店の、ガラス越しのソファーに座っている私たち、
私の組んだ太腿の間、彼のもので濡らしてしまった、恥ずかしい秘唇、
知らない誰かに、覗かれていたようにも思えました。
「また、逢ってくれますよね」
「駄目よ、もう」
「今度は、もっと、ゆっくり」
「嫌!今夜のこと、もう、忘れて」
「順子さんだって、さっき、あんなに」
お店のライトが急に暗くなって、新郎新婦のところで、
可愛らしいケーキカットが始まりました。
私、そのロウソクからの散らばるような光を、
しばらく、潤んだ目で見ていましたが、
彼の横にあったハンドバッグを手に取ると、そっと、席を立ったのです。
さっきのエレベーターホールまで来たところで、
案の定、彼が追いかけてきました。
「もう、帰るんですか」
「えぇ、ごめんなさい、もう、遅いから」
「また、逢えますよね」
「困らせないでね」
「だって、僕たち、もう」
そこに、丁度、お手洗いから出てきた女性、彼の職場の方かしら、
「なに、また、無理なこと言ってるの」
「そんなんじゃないんだ」
「諦めなさいよ。順子さん、人妻よ」
そう言われて、彼、やっと、さっきまでお手洗いの中で、
自分のものにしていた私の腰から、名残惜しそうに、そっと、手を放したのでした。
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