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山城温泉3

2018.09.24 (Mon)


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「まぁ、お綺麗な方ね」
そう言って、湯船に身体を浸したご婦人、ふくよかな白い肌が素敵でした。
九谷焼のアートパネルが設えてある内風呂、
山城温泉のとろりとした泉質に抱かれて、その見事な焼き物の壁を眺めているだけでも、
本当に癒される時間でしたよ。

「さっき、廊下で話されていたのご主人でしょ、美男美女のご夫婦なのね」

東京からご夫婦で北陸旅行に来られているというご婦人、
豊かな胸元にお湯を掛けながら、暫くお話をされていましたが、
まさか、目の前の私が、夫ではない男の人と、ただならぬ時間を過ごすかもしれないこと、
もちろん、思われるはずもなかったでしょうね。

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「風呂から戻って暫くしたら、食事前に一度、部屋にお邪魔するよ」
「駄目ですよ、困りますから」
「いいだろう、僕たち、もう、他人じゃないんだから」
「そんなこと、言わないでください」
「部屋に入ってきていいんだったら、ルームナンバーに射してある花を、抜いておくんだよ」

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お風呂から部屋に戻ると、当たり前のように鍵、掛けました。
ドアに飾ったあった可愛らしいお花は、そのままにしておきました。
開かないドアのノブを手にしたNさん、どう、思うかしら。
でも、それは、彼の妻ではない私がしたことだから、
諦めてくれるかしら。

始めてお逢いした、クルーズ説明会の夜。
薄っすらと街の灯が忍び込む、人目を避けたフロアーで、
成り行きのままに重ねあってしまったくちびると唾液の味を、
そして、胸元に忍び込んできた彼の手の感触、なぜだか急に思い出され、
浴衣の胸元に手のひらを当てた私、
まぶたを閉じると、小さな息、そっと漏らしてしまっていたのです。

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広い玄関、踏込、気持ちの良い畳の上を裸足で歩くと、
素敵な和室とツインのベッドルーム、
そして、露天風呂を備えたテラスの向こう側には、
やがて、穏やかな夕陽が染め始めるだろう、山城温泉郷の落ち着いた街並みが、続いていました。

私ひとりのために、いえ、もしかしたら、自分と私との時間のために、
こんな贅沢なお部屋を予約してくれたNさん、
やっぱり、申し訳ない気持ちと、彼の笑顔がこころに湧き上がり、
ルームナンバーに飾ってあったお花、もう一度、目に浮かべてしまっていたのです。

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