ひろしとのこと12 帰宅
2019.03.25 (Mon)
玄関のドアを開けると、
毎日モップを掛けているリビングに続くフローリングの一部が、
幾らか曇っているように感じました。
自分の家に帰り着いた瞬間、
ここに住んでいる、当たり前の人妻の顔に戻っていたんでしょうね。
小さな茶色のトラベルバッグを、リビングのソファーに下ろし、
シャワーを使うために、バスルームに向かいました。
彼に、言われるがままに、身体を開いた自分の身体に、
熱いほどのお湯をあて、
あきらめたようにひとつ、小さな息を、吐いたのです。
何も身に着けない濡れた身体に、日頃より、随分と丁寧に、バスタオルを使いました。
それは、彼に抱きしめられ、首筋に濡れた舌先を、幾度も感じていた時間、
意識が薄らいだ、その思い出せない時に、
もしかしたら私の白い肌に、彼のくちびるの跡、
くっきりと、付けられているかもしれなかったからです。
長い黒髪、細い首筋、なだらかな肩口と、そして、豊かな乳房、
そんな鏡に映る自分の裸の姿を眺めながら、
この身体を、あれほど愛してくれた彼との時間、
ぼんやりと思い出そうとしていたのでしょうか。
昨日のお昼過ぎに、
初めて、私の身体の奥に、自分の精液、そのまま注ぎ込んだ後も、
私の身体、なかなか放してはくれなかったし、
夜、私を泣かせ続けた長い営みの終焉の時にも、
そして、今朝、薄いレースのカーテンから差し込む、淡い朝日に包まれながら、
二人の、裸の身体、絡ませ合い、繋ぎ合った時にも、
その度、熱く、驚くほどたくさんの精液、しっかりと注がれてしまったんです。
それはもう、取り返しのつかない時間でした。
その時のことを思う今、
何の妨げるもののないままに、自分の身体の一番奥に注がれた、
彼の洗い流せないもの、
だんだんと、身体の中に、染み込み始めているような、
そんな心持を感じて、胸に手を当てた私、
そっと、目を閉じてしまっていたのでした。
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