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「幸せの行方」 その23 懐かしい口づけ

2020.03.09 (Mon)


●懐かしい口づけ

強い興奮のためか、上手く話せない自分が感じられた。
こうして、二人だけで会うのは、本当に、何年振りなのだろうか。

薫を身ごもった後は、家族で会うことも、すっかりと少なくなり。
慶彦への特別な感情も、だんだんと流れ去るように薄らいでいたのである。
けれど、こうして、抱き寄せられて、唇を合わせた途端、
懐かしい時間が、瞬時に順子の身体が思い出していた。

この人と身体を繋ぎ合い、そして、男の人の液を身体の奥に注がれた。
薫を身ごもったことが分かるまで、幾度となくそんなふうに抱かれたのだった。
始めは、抗う自分の心と身体を感じていたものの、
やがて、抱かれれば、正直にその液を求める言葉を口にすることに、
それほど、抵抗がない自分を、許すようになっていたのだ。

やがて、順子が薫を身ごもると、当然のように彼の役目は終わり、
その後も、彼が、薫を父親として抱くことは、当然のことながらなかったのだ。
薫の百日のお祝いの折に、順子からその胸に預けられ、
叔父と甥の関係として、あやした時間だけが僅かにあっただけだった。
けれど、順子を母親にしたのは、慶彦であったことは、
まぎれもないことであったのだ。

慶彦には申し訳のないことをした、と 今も順子は思っている。
従順な優しげな彼だから、
一族のためだからとの兄からの頼みを、拒み切れなかったのだろう。
そして、今も、同じ男としての役割を果たすために、
再び自分と身体を繋げようとしているのだ。
けれど、今度は、本当のことを知らないままに、自分のことを抱き、
そして、同じように、男の液を注ぎ込むことになるというのに。

母親たちが、薫の兄弟を望んでいる。
と 兄から言われたのは、一月ほど前のことだった。
それのことは、薫が生まれてから暫くして、
慶彦が予感したことでもあった。
兄夫婦の子どもが、薫ひとりと言うわけにはいかないだろう。
親たちは、きっと、すぐに薫の次の孫を望むだろうと。
その時には、また、自分に、
美しい兄嫁を抱く機会が、あるのだろうかと、
身体を熱くしたことがあったのだ。

そして、その順子の身体が、今、こうして、自分の胸の中にあった。

兄も薫も、午前中から両親の家を訪ねていて、
今日一日は、この家で、二人だけの時間が流れるのだ。
懐かしい順子の唇を味わいながら、その唾液を音を立てて啜り飲んだ。
我を忘れるほど自分が興奮していることを意識したまま、
苦しげに喘ぐ順子を、欲望の赴くがままに、更に、強く抱きしめたのだった。

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燃え上がるような興奮が、いくらか治まり、唾液の引く唇が離れると、
順子は、恥じらいのため、慶彦と目を合わせぬまま、
手を引いて、二階の寝室に向かった。
あの時も、このリビングの絨毯の上で身体を繋げあい、
おびただしい雅彦の液を、そのまま、身体の奥に迎えた。
そして、再度、雅彦に願って、
自分が身ごもる場所として、相応しいと思えた寝室に誘ったのであった。

そこは、雅彦と自分の大切な場所でもあり、
本当は、二人以外の人が、立ち入る場所ではなかったが、
その場所に、夫ととは違う男といることだけで、
自分の身体が、強い興奮に包まれることがわかった。

「先に、シャワーを使わせてね」

恥ずかしかったけれ、ど そう言ったのに、
またも、息の詰まるほど抱きしめられ、
抗う身体から、それを隠すものを上手に脱がされていた。
このまま、繋がるつもりだろう慶彦の欲情の勢いに流され、
彼の思うがままに、その白い身体をベッドに横たえると、
その自分の身体を見下ろす慶彦の視線を感じて、
思わず、シーツで遮ろうとしたが、
その時には、白い太ももには、慶彦の唇が当たれていたのである。

シャワーさえ使っていない順子の秘唇を、
慶彦の唇が、熱心に吸いたてる。
既に、おびただしい蜜液をあふれさせ、柔芽も舌先で転がされていた。
火の出るような恥ずかしさのため、顔に当てていた両手が、
甘い声を出し始めてしまった口元に、
そして、最後には、更に深い快感を求めて、
とうとう、慶彦の髪にあてがわれてしまったのだった。

00647.jpg

二人にとって、初めての夜。
口づけさえ拒んだし、快感をも、求めようとしなかった。
彼に抱かれることは、ただ、子どもを身ごもる理由だけであったからだ。
もちろん、抱かれるままに、女としての身体は燃え上がり、
幾度となく、登りつめながら、慶彦の液を欲しがる言葉を口にした。
それは仕方のなかったことだと、自分を許していた。

数年ぶりだというのに、懐かしい口づけを終え、
女として最も恥ずかしいところに、舌を使われると、
順子は、あえなく喜びの声を聞かせることになった。
止まらない麻痺が、二度、三度と身体を襲い、
美しくうねるらせる姿を、慶彦に見せるしかなかったのだ。

慶彦も、前に抱いた順子のことを思い出そうとしたが、
その時以上に、今、目の前にうねる白い身体は、
美しさを増しているようにも思えた。

艶のある、長い黒髪、
喘ぎのために、薄っすらと開かれ、可愛らしい舌を見え隠れさせる、薄紅色の唇、
張りのある、もち肌のしろい身体、
揺れる、たわわな乳房、
授乳を終えたというのに、前と同じような桜色の小さな乳首、
見事に括れた腰、
男心を誘うまろやかな臀部、
薄い体毛、
そして、今まで、自分の唇で味わっていた、秘唇。

愛おしくて、慶彦は、もう、我慢することができなかった。
自分の強張りに手を添えると、
順子の太ももの間に、慌てるようにして、膝を進めた。

先程の愛撫での唾液と、順子の奥から湧き出した蜜液で、
そこは、もう、二人の身体を繋げるに充分過ぎる潤いが感じられたし、
その花びらは、薄っすらと、開き始めているようにも、見て取れた。

慶彦は何時になく、張り詰めたものを順子の秘唇にあてがうと、
ゆっくりと、その花びらを押し開き始めたのである。

二人のもので、おびただしく濡れていたのに、
きしむようにして、入り込んできた慶彦のもので、
順子は、仰け反り、細い声をあげさせられた。
それは、戻り、進み、そして、身体の奥にまで、届いていた。
昔と同じように、その途端に、
短くも鋭い喜びが、順子を襲い、その喜びの中で、
自分の身体が、慶彦のものを、きっと、強く締め付けただろうと思えた。

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「益々、綺麗に、素敵になったんだね」

義姉の身体をゆっくりと、突き揺さぶりながら、
慶彦は、低い声で、そう語りかけたのだった。
目の前にある、豊かな両乳房が、
その突きに合わせて、たわわに揺れていたし、
そして、その度に、順子の唇から、短い喜びの声を聞くことができた。

こうして、会えなかった永い時間の埋め合わせをするように、
慶彦は、執拗に順子の身体を求め続けた。
それまで、順子が経験した抱かれ方の、殆ど全部だと言えた。

たわわな乳房を、後ろから揉まれながら、強い突きに声をあげたし、
彼の強張りを、順子自らの手で、身体の中に挿入した。
それも、慶彦の腰に跨った順子の中に、
自分のものが、出入りするところをみたいという彼の要求であった。

彼の求めるがままに、身体を開き、彼の言うままに抱かれ続けた。
何度、登りつめたかわからなかった。
それは、心ならずも、恐ろしく深い喜びでもあった。

「お願い、もう、かんにんして」

絶え絶えに、許しを請うしかなかったし、
永い時間、声をあげていたせいだろうか、
それは、もう、悲しいほど掠れた声であった。

美しい身体を、十二分に堪能した慶彦も、
限界にきていた。
涙に濡れた順子の頬に唇を寄せると、
改めて抱きしめ直したのだった。

終演に向けての動きが、本格的になってきた。
激しい喘ぎの中で、
思わず慶彦の唇を求めたことは仕方のないことだと思えた。
もうすぐ、彼の男のものが、自分の身体の奥に注ぎ込まれる。
そう、思った途端、
身体の中がその時に合わせるようにして、
収縮を始めようとしたのが分かった。
そして、慶彦の首に、両腕を絡ませて、その、肩に噛り付いた。
そうしなければ、恐ろしいような声をあげそうな予感がしたからである。

お互いが、汗に濡れた身体を強く抱きしめ、激しく動きを合わせながら、
待ち望んだ喜びが二人を襲うことを求めた。
そして、慶彦の右手の平が、順子の張りのある乳房を強い力で包み込んだ瞬間、
彼のものが大きく膨らみ、
二人が望んだとおりに、熱い慶彦のものが、順子の奥を満たしだしたのだ。

「ああ、すごい」

慶彦のもので、身ごもるということでは、
偽りだったが、
今、こうして、慶彦に愛され続けた順子にとって、
その時だけは、本当のことのように思えたのかもしれない。

行く度も、発作は続いて、順子の蜜壺は、慶彦の温かいもので満たされていた。
絶え絶えの喘ぎのまま、彼の胸に抱きしめられ、
順子は、安堵の息を吐いた。
昔とは違う意味で、慶彦には、申し訳ない交わりになった。
本当のことを話せぬまま、
身体の喜びの余韻に満たされたことは、
今に自分にとっては仕方のないことのように思えたのだ。

二度目の濃い愛液を順子に注ぎ込んだ慶彦が、
順子の身体から、やっと離れたのは、
随分と時間が経ってからのことだった。
雅彦たちが、帰宅する時間には、まだ、間があるだろうと思われたが、
乱れた自分の様子を、少しでも、見せるようなことをしたくなかった。

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「また、逢えるね」

名残惜しい豊かな胸を揉み続けながら、
そう言った慶彦の言葉に、順子はゆっくりと頷くしか、なかったのである。


これだけ、順子の身体を翻弄し、
欲望のおもむくままに自らのものを注ぎ込んだ慶彦は、
きっと、暗黙の裡に納得してくれるだろう。
順子が身ごもり、そして、生まれてくる子どもが、
まぎれもなく、自分の子どもであることを。

けれど、順子の身体にとって、
慶彦のものを受け入れたこの時期は、
子どもを身ごもることはない時期だったし、
夫の雅彦によって、初めての避妊薬も服用させられていたのだった。
ただ、そのことは、慶彦にとって、当然知る由もないことだったのだが。


「彼の子どもを、柏木の子どもを産めばいい」
思いもかけなかった雅彦の言葉。

驚いて、顔を上げた順子に、
更に、ゆっくりと、雅彦は続けた。

「そうすれば、きっと、幸せの行方が、見えてくるさ」

なぜだか、涙が頬に流れたことが感じられ、
思わず、彼の胸に顔を埋めた。
雅彦の言うように、そうすることが、幸せなのだろうか。
いろいろなことが、頭の中を回り始めていたが、
彼が言うようにするしか、自分たちのなすすべはないように思えたのだった。

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09:51  |  「幸せの行方」  |  Trackback(0)  |  Comment(8)

Comment

更新ありがとうございます

順子さん、こんばんわ、楽太郎です。
ちょっと、多忙が続いておりましたが、幸せの行方23アップありがとうございます。
こちらを一番楽しみにしておりました。
「本当の幸せの行方」とは?
この流れから、導かれる「答え」とは?
続き楽しみにしております。

世間を騒がしているウィルス騒ぎでは、一刻も早く収束に向かってほしいのですが、その兆しもどうなんでしょうね、、、
順子さんやご家族に大過なく過ごせることを祈ってます。
楽太郎 |  2020.03.09(月) 18:47 | URL |  【編集】

導かれる「答え」とは?

楽太郎さん、おはようございます。
コメント、いつも、ありがとうございます。

慌ただしく、心配な毎日が続いていますが、
いかがお過ごしでしょうか。
本当に、穏やかな日に戻ることを、
願っているんですが。

「こちらを一番楽しみにしておりました」
そう言っていただくと、本当に嬉しいです。
更新するたびに、前に書いた原稿の書き直しを少ししているんですが、
やっぱり、自分にとっても、大切なお話なんだなぁって、そう思っています。

昨年は、夏前の神戸の出来事の後、
自分に驚くほどの時間が流れていたんですけど、今年は、夫だけのものである、大人しい自分でいることは、ある意味、嬉しいことなのかもしれませんね。

コメント、ありがとうございました。
くれぐれもご自愛され、お過ごしくださいね。

順子 |  2020.03.10(火) 09:05 | URL |  【編集】

順子さま

「幸せの行方」こんなに早く続きを読めるなんて思ってなくて嬉しいです。
とくに、今の世の中の状況から、実感もわかないけど危機感はありと、言いようのない不安の中で、順子さまのお話しを読むことは、私には現実逃避の場所になっているように思います。
お忙しいとは思いますが、可能な限り順子さまのペースで進められて下さいね。
「幸せの行方が見えてくる」
この一言で、主人公の順子の心は、少しは穏やかなものになったんじゃないかと思いたいです。
登場人物の男女が、これからどんな波に流されながら答えを出していくのか見守りたいです。
柚葉 |  2020.03.10(火) 11:33 | URL |  【編集】

現実逃避の場所

柚葉さん、こんにちは。
コメント、ありがとうございました。

本当に、なんだか不安な毎日ですが、
お変わりなくお過ごしでしょうか。

そうですね、物語を読むことって、
ある意味、現実逃避でもありますよね、
その時だけは、実生活の心配事を忘れることできますから。

何度も書いているように、
「幸せの行方」は、ほぼ、書き終えています。
更新するときに、改めて読み直して推敲しているんですよ。
完結はしているんですが、その時、その時は、違った私が読んでいて、
少しだけですが、書き改めることがあるんです。

暖かくなったら、収束するのかと思っていましたが、そうでもないみたいで、
数か月は、心配な時間なようですね。

どうか、ご自愛されて、お元気でお過ごしください。

順子 |  2020.03.10(火) 13:08 | URL |  【編集】

順子さま
地震速報みました。
順子さまご家族のみなさんご無事ですか?
余震などがあるかと思います。
気をつけてください。
柚葉 |  2020.03.13(金) 03:11 | URL |  【編集】

ありがとうございます

柚葉さん、おはようございます。
地震のご心配、ありがとうございます。

能登半島北側、それから富山の方で、
強い揺れだったようですね。
私は、主人のベッドにいましたが、
やっぱりびっくりしました。
本当に、予想できないものって、
怖いですね。

とか、書いていたら、
九州でも、地震があったようですね。
怖いものが、いろいろありますね。

ご心配、ありがとうございました。
お礼申し上げます。
順子 |  2020.03.13(金) 10:13 | URL |  【編集】

お久しぶりに

お久しぶりです。

今朝大きな地震ありましたね。

金沢では大丈夫でしたか?

幸せの行方 懐かしくてコメントしました。

また、お邪魔します。
海原 |  2020.03.13(金) 12:15 | URL |  【編集】

懐かしくてコメント

海原さん、こんにちは。
コメント、ありがとうございました。

お久しぶりだったですね。
お元気で、お過ごしだったでしょうか。

とにかく、真夜中だったので、
本当に、びっくりしました。
幸い、大きな被害がなくてよかったです。

なんだか、いろいろなことで、
心配な毎日ですよね。
早く、春が来ないかなぁって、
そう、思います。

コメント、ありがとうございました。
また、お願いしますね。
順子 |  2020.03.13(金) 14:43 | URL |  【編集】

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