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「幸せの行方」 その9 夕子

2009.06.07 (Sun)


● 夕子

新潟医師会主催のシンポジュウムにパネリストとして招待されていた多田は、
開会予定の10時前に関係者と打ち合わせをしておきたいと言うので、
早めにホテルのレストランで、焼きたてのパンの香ばしさの中に、
二人での朝食をとりました。
時折、多田が子どもみたいな大きな欠伸をするのを、私は嬉しそうに見ていました。
だって昨夜、何時になくあんなに情熱的に私のことを愛してくれたのだから、
それは、しょうがないことと思えたからです。

「会が終わった後、こっちの医者たちと食事をして、その後きっと飲むことになるから、
悪いけど多分午前様になりそうだ。観光が終わったらゆっくりしていて好いよ。」
なぜか私と目を合わせないまま、
ガラス越しのホテルの庭を見つめながらそう言った多田を、
八時過ぎにはホテルのロビーで送り出しました。
ロビーの吹き抜けの天井まで続くガラスの向こうには、
この季節らしい爽やかな大気と心配のない天気が予想されました。

 医師会を通して予約してもらっていた観光タクシーの方を待って、
ラウンジでいただいていた一人でのコーヒー。
その二口目を唇から離した時、思いもよらぬ笑みを見つけました。
それは、こちらのテーブルに近づいて来る、
大学時代の同窓だった田中君の微笑みだったのです。

フェリーに遅れるわけにはいかないからと、
二人を乗せた車はスピードを上げて港に向かっていました。 
 「驚いたわ、あなたが案内してくれるなんて。」
 「五年振りかな。ほら、そのときだって夕子は男たちに囲まれていて、
ゆっくり話もできなかった。ラグビー部のOB会じゃ女性が少ないからしょうがないけど。」
 そう言うと、躊躇する様子もなく空いた右手を、肘掛に置いていた私の手に被せてきました。
昔と同じように大きな固い、男性らしいたなごころでした。
 「あなたが、お父様の会社に居ることは聞いていたわ。」
 「県のラグビー協会で学生たちの世話をしているんだ。
これでもこの街じゃ結構有名人なんだぜ。
それから時々こうやって観光案内の運転手兼ガイドさんさ。
親父に悪いからな。自分の好きなことだけさせてもらっているよ。」
 そう言って私の方を見た田中君の目の上には、あの時の縫い傷を見つけることができました。
随分と目立たなくはなっていましたが。


 大学一年秋の新人戦はライバル校との激戦になり、
後半戦途中蹲った田中君にところに、マネージャーとして走り寄った私の前には、
目の上をぱっくりと切り、おびただしい血の中に肉面さえ見せていた彼がいました。
けれど、選手交代を納得せず、
待機していたお医者からその場で麻酔なしの縫合をしてもらった彼は、
「魔法のやかんの代わりに、夕子、魔法のキスをくれ。」と言い、
血に染まった頬にぶつかる様なキスを貰うと、
グラウンドに向かって走り去って行ったのです。

● 洗礼

逞しい身体に押しつぶされそうになりながら、
彼の人並みはずれた大きな男性を受け入れたのは、
その試合から、何日もしない激しい雨の夜のことでした。
おびただしく濡れた私のものは、
やっとのことでそれを迎えることができましたが、
彼の固くて長いものの先は、
自分の身体の奥にこんなに深い場所があることを教え、
更に当たり前の呼吸さえ許してくれない激しい動きに、何度も気を失いかけました。
けれど、眠ることも逃げることも許してくれなかった彼は、
何時間も私の身体を揺らし続け、
信じられないほどの量の精液を幾度となく注ぎ込んでいたのです。
 「もう かんにんして。」
 最初と変わらない固さのもので彼と繋がっていた私は、
本当に涙を流しながら掠れた小声で頼みました。
けれど、その言葉に逆に欲情したように、彼はまた、新しい動きを始めたのでした。
 やっと彼が裸の私から身体を離したのは、次の日のお昼過ぎでした。

 彼と彼のものの洗礼を受けた私は、
ある意味では放心したような日々を送り始めていました。
それまで、優秀な学生として過ごしていた毎日は、
彼と彼のものをむさぼるように求める日々になっていたのです。
週のうちの半分は、ラグビーの練習の終わったあとの時間を、
二人は繋がりあって過ごしていたし、
練習や試合の予定のない週末は、
食事をする以外は二人とも裸の姿で、ベットの上でお互いの体液を舐めあい求めあい、
何日も尽きることのない愛欲の時間を過ごしていたのです。

やがて、学校にも行かなくなりました。
彼の方は流石にラグビーの練習は休みませんでしたが、
裸の身体に巻きついた彼の腕を解いて、
学校に行くためにベッドから起き上がろうとする私を、
容赦ない彼の腕が引きずり戻すことを私と私の身体が喜ぶようになっていたからです。

親しい友人が随分と心配して幾度も意見してくれました。
私もどうかしなければと思いました。
けれど、結局は駄目でした。
通学の道筋や講義中の教室で、
ふと彼と彼のもののことが脳裏に浮かぶと恐ろしいほど身体中が燃え上がり、
私の最も女である部分がそこにはいない彼のものを迎える準備を始めるのでした。
 大学校内の清潔な手洗いの中で、背後から貫かれ泣き叫んだことがあります。
部員たちが練習に出払った部室でも、椅子に座った彼に跨って腰を嫌らしく振ったこともあります。
どれも、私から彼を誘ったことでした。
どうかしていていたのは間違いありません。
愛欲と肉欲が、理性と良識を完全に覆い隠していたのです。

● 転機

けれど、そんな、ただれたような毎日を送るようになって二ヵ月後の夜、
思いもよらぬ転機は訪れました。
 その時も、幾度となく身体を繋ぎ合った二日目の夜を、
彼の私のマンションで過ごしていました。
私の奥に多量の精液を放った彼は、流石に微かな寝息を聞かせながら、
逞しい裸のままベットに横になっていました。
私は自分が収めきれないで秘唇から滴ろうとする彼の液を洗い流そうとして、
バスルームに向かう途中洗面台に映る自分の裸の姿を見て、
声にならない小さな悲鳴を上げたのです。
そこに映った私は、思いもよらぬ姿でした。
豊かな白い両乳房をあざの様な手の形がうっすらと被い、
左側の乳首の上には濃いキスマークが二つくっきりと見て取れました。
更に、肩口には今にも血液が滲み出そうとするほどの深い歯型が付けられていたのです。
それらは、私に対する彼の愛情だったに違いありません。
けれど、何故かどうしようない悲しみが私の心を襲いました。
両手を洗面台につくと熱い涙が幾筋も滴り落ちました。
そして、涙とともに、彼への感情が自分の中からひいていくように思えたのです。

 次の日にラグビー部へ退部届けを出した私は、
夏休み明けからは入学当初の自分に戻っていたのでした。
彼はそれまで以上にラグビーに打ち込み、
時折大学構内で会えば、笑顔ですれ違う関係になっていきました。
それから、兄の医学部の後輩である多田と出会うまでの二年近く、
私は公認会計士を目標に、
少しだけ遅れた時間を取り戻すため、勉強に勤しむ毎日を過ごしたのです。

● 群青色の海

 「予約客のリストを見た時、夕子だとわかったんだ。
医師会からの依頼だったんで、失礼があったら不味いからね。
車だって私用車さ。
多田は元気にやってるんだろう。あいつはいい奴だから、
夕子も幸せだよな。」

日本海の海は珍しく穏やかで、
群青色の波間を大型のフェリーは順調に進んでいるように思えました。
特別室を予約してくれていたので、ゆったりとした船旅です。
ツインベットとソファーのあるホテルのようなお部屋で、
高い階にあるせいか見晴らしも良く、贅沢な数時間が予想できました。
バルコニーに出て潮風に吹かれようとすると、
彼が後ろからその大きな身体を寄せて、前に腕をからめました。
「楽しみにしていたよ。この瞬間を。」
「多田がいるのよ。駄目よ。」
「多田はいい奴だ。夕子があいつの子どもを産むって聞いた時も、
 しょうがないって思ったさ。そして、今もそう思っている。
 けれど、今日は久し振りの時間だ、いいだろうあの頃のように。」
私は軽い目眩を感じました。あきらかに大きく固くなった彼のものが、
私の後ろから押し付けられているのが分かったのです。
それは、二人の間にある洋服越しであるにも関わらず、
そのものの熱さえ感じられるようでした。
 「昔のことよ。」
大きな手の平が、乳房を狙ってブラウスの前に当てられそうになった瞬間、
私は自分でも驚くくらいに上手に彼の腕からすり抜けていました。
「せっかくだから、船内を案内して。この船もあなたの会社のものなんでしょ。」

●支配したもの

両津港に着いた後、金山とトキセンターを見学しました。
佐渡は小さい時に来たことがあっただけで、観光としては随分と楽しめました。
碧い海としっとりとした山の緑。自分の街とはまた違った自然を感じたのです。

見学の途中、彼の逞しい左腕にずっと手を絡めていました。
時折肘が私の右の胸の膨らみをこねる様に触るのも、
それから腰に手を回して身体を寄せてくるのも、許してあげました。
船の中でキスさえさせなかったからちょっと可愛そうに思えたし、
随分と久しぶりだったのに、少しずつ昔のことが思い出されたのでしょうね。

少し遅めの昼食は相川のホテルに和室のお部屋を取ってくれていました。
目の前の日本海は昼下がりの気だるい様相でしたが、
部屋に入る前にホテルに収蔵されている美術品を見ることも出来て、
観光同様随分と楽しめました。

 アワビをふんだんに使った食事を終えた後、勧められるままに内湯をいただきました。
パノラマビューの檜風呂からは素晴らしい日本海が堪能できます。
私は胸にお湯をかけながら、
彼と一緒の部屋でお湯を使うことが、
自分にとってどんな意味を持つことなのか、考えないことにしました。
沖の方を、小さな船が走っているのが見えます。
少し風が出てきたのでしょうか、白い波が見えたような気がしました。

 彼のものがあてがわれた時、本能的に無理だと思いました。
多田のもので連日のように愛され続け、おびただしい精液を受け入れ、
子どもを産み、そして、自分の身体が熟れ始めたことを自覚していた今の自分にさえ、
それを受け入れることはとうてい無理だと感じたのです。

脇の下から回された腕は私の身体が上に逃げられないように両肩を抱きしめ、
彼のものはその本望を遂げようと、秘唇を擦り続けていました。
彼のものが息づくたびに、その先からは透明の液が滴り出て、私のものを濡らし、
私の秘唇も、それに応えるように奥から新しい蜜を溢れさせていました。

彼の首に手を回した私は、両膝を深く折り曲げると、
これ以上無理だと思われるところまで、太股を外側に開きました。
二人とも今の自分たちのことを忘れて昔のころのように、
それぞれの身体を繋げるために、懸命に努力をしていたのです。

 ふと 多田のことが思い出されました。
大勢の人の前で話すことの苦手な彼はきっと今頃、
パネリストとして汗をかきながら、ステージの上にいることでしょう。
そして、妻である自分は今 多田の知っているこの人の熱い太いものを、
自ら自分の中に収めようとして、
これ以上できないほど、身体を濡らし開いているというのに。

  彼のもののなかで一番太い先の部分が、
私のものをきしませるように押し開きながら突破した瞬間、
私は顔を仰け反らせて彼の肩口にしがみつきながら、
自分でも驚くような恥かしい声をあげていました。
多田のことはその時 もう消えうせていました。
彼のものは一度入り込んだところから、
少しだけ戻りながら、そして、少しだけ進みながら、
僅かずつ、それでも、確実に奥に向かって進んでいきました。
そして、それの動きを助けるように、たくさんの蜜を溢れさせた私の身体は、
とうとう、彼の本望の全てを、一番奥にまでしっかりと迎え入れていたのです。
   
 「相変わらずだな。」
 昔の恋人と繋がることを完了した田中は、熱い息の中で私の耳にそう呟きました。
私はその言葉に応える答えも見つけ出せず、それに、応える余裕もありませんでした。
これ以上広がらないと思えるほど私の中は広がり、
彼のものを締め付けているようにも思えました。
 昔のことは忘れたつもりでした。
けれど、彼のものは覚えていたつもりだったそれ以上に、
熱く、太く、長く、私の中を支配していったのです。
 
● 変わったもの

二人の身体から流れ出した液で、清潔だったシーツは濡れていました。
そして、そこに横たわった裸の私の秘唇からは、
今しがた彼から注ぎ込まれた精液が、僅かにつたい流れようとしていました。
夜に着くフェリーだから、こちらはゆっくりの出発でいいよ。
ホテルに入る前に、彼が言ったことが思い出されましたが、
夕刻に近づいていることは、空の様子から察することができました。
彼は、枕元に座り、治まらない麻痺を見せる私の裸の背中と腕を、
ゆっくりと摩りながら、満足そうな表情を見せていたのだろうと思います。
まだ乳首を固くした乳房に、時折手を這わせると、
優しく揉みながら、その感触を楽しんでいるようにも思えました。
達することを告げる言葉を、何度彼に聞かせたか分かりませんでした。
繋がっていた間、あの時と同じように彼の恐ろしいものに翻弄されていたのは、
紛れもないことでした。
けれど、昔のような、耐え切れないような荒々しさや辛さは、
まったく感じることはありませんでした。
むしろ、じれったいほどの優しさに私は包まれ、そして抱かれ続けていたのです。

昔の交わりのなかで、彼が最も好んだのは私の乳房を下から見上げるものでした。
けれど、彼の体積と長さを最も痛感するこの姿勢は、
闇雲に下から突き上げて彼が喜ぶ分、私には耐え難い姿勢でもありました。
彼が動きを更に激しくして唸りながら射精するまでの間、
痛みのために、本当に泣きながら耐えたことも二度や三度ではありませんでした。
でも 今日は違ったのです。まるで、別人のようでした。
私は彼の熱く太いものに自分の細く白い指を添え、
間違うまでもなく少し開き始めていた秘唇に当てがいました。
それから自分の潤いで彼のものの先をゆっくりと濡らすと、
少しずつ腰を沈めていったのです。
一度目の射精で、私の中にまだ残っていた彼のものが助けになったのでしょうか、
彼のものは今日始めて迎えたときよりもはるかにスムーズに奥まで到達していました。
それからも、彼は優しく動き続けました。
喉を反らせ、背筋を反らせ、私が彼のものを完全に飲み込んだ後も、
子宮口をこじ開けるように押し当てられるものに、
むしろ私の方からもどかしくこすりつけ、喜びの極みを追い求めたのです。

 「変わったのね。」
掠れた声で言った言葉の意味を、彼はきっとわからなかったかもしれません。
乳房の膨らみを楽しみ続ける彼の手は、とうとう最後まで優しいままでした。


● 帰港

 帰りのフェリーは、
暗い夜空と暗い日本海に包まれた闇の中にありました。
僅かに船首が砕く変わらない波の音だけが、
船が帰着する港に向けて、心配なく走っていることを教えていたような気がしました。

 「港に着けば、君は多田の奥様の顔になって、
当たり前のようにあいつのところに帰っていく。そんなふうに思うと、結構辛いよな。」
 
もう、あと一時間もすれば、
沢山の港の明かりがこの船を迎えてくれるだろうと思えるころになって、
行きと同じ特別室のバルコニーで私と身体を寄せ合っていた彼はそう言うと、
ブラウスの前に回していた両手で上手にボタンを外し始めました。
キスさえ許さなかったほんの数時間前と違い、私は黙って目を閉じていました。
下着の上から胸を優しく揉まれながらそのまま部屋に入った私は、
ソファーの背もたれに両手を置くと、
背中に被さるように身体を寄せてきた彼のために、
何も言わないで、観念したように自分の手で下着を落としました。

 昨夜は夫である多田のものを受け入れ、今日昔の恋人だった田中と身体を重ね合った。
そして、二日後には、順子たちとの約束の夜を迎える。
濡れてうっすらと開きだした秘唇に、
そっとあてがわれた熱い彼のものを迎えるため、
私は何かを振り払うように、そして、諦めたように、小さな吐息を吐くと、
ゆっくりと彼の動きに合わせるようにして、腰を揺らしだしていたのです。

窓から見える日本海の波間を、煌々とした月夜が照らしているようでした。


16:59  |  「幸せの行方」  |  Trackback(0)  |  Comment(0)
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