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「幸せの行方」 その14 ホノルルに向けて

2017.12.11 (Mon)


海外線エアポートのラウンジルーム。
これから始まる旅への静かな興奮がフロワーに満ちていて、
里子はこの場所の雰囲気が好きだ。

人々もやはり上品で、女性だけの二人旅だけに余計な気苦労もしなくて済む。
ピアノが奏でる「酒とバラの日々」のBGMが、ゆったりと流れ溶けていた。

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少しだけでも飲んでいれば就寝も楽だろうからと、
セルフサービスで持ってきたシャンパーニュ産のスパークリングワインが、
里子の目の前のテーブルで素敵な光沢を放っていて、
そのグラスの向こう側には、
日本人離れした華子の姿が霞んで揺れて見えていた。

中学の時に帰国子女として転校してきた華子は、
英語はもとよりスペイン語やドイツ語も堪能なトリリンガルで、
日常の英会話がやっとな里子には心強い友人である。

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軽い炭酸と上質なワインの味が、気持ちよく身体に滲みこんでくる。
研修が目的ではあるが、やはり海外への旅には変わりない。
心躍るものが自分の中にあるのは仕方のないことだと、
里子はそう自分を許していた。

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ドライマテイーニのグラスを片手に持って、
持参してきたお互いの水着の話をしていた華子の眼差しが、
傍目にもわかるような驚いた表情を見せた。

里子に断わって席を立った華子は、
たった今ラウンジルームに入ってきた二人の男性の前に歩み寄った。
上質なオープンカラーのワイシャツから、
上場のビジネスマンであることが察せられた。

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二人を連れてきた華子は、
高校の先輩とその会社の同僚だと里子に紹介した。
二人とも端正な顔立ちで清潔な印象を受けた。

一度席を立った二人はカウンターで生ビールのグラスを選ぶと、
里子たちの隣に座り直し、会釈し合いながらグラスの音をたてる。
若い女二人の移動だけに、往路だけでも知人ができたことは、
里子には嬉しかったし頼もしくもあった。

里子たちの大学から紹介のあった今回のハワイでの研修は、
医学生を対象とした3週間の長期なプログラムではあるのだが、
里子たちの希望する専攻科には不可欠とも言える研修でもある。
華子の先輩である舟木と同僚の左近は、
薬品会社の広報の仕事で、二週間ほどホノルルに滞在するとの話であった。

なんでも、今回は飛行機の機種を選んでの搭乗らしい。
二人の話を聞くと新しく導入した飛行機らしいのだが、
里子たちにはよくわからないことでもあり、
なんだか子どもみたい、とそう心の中で思った。

搭乗の時間が近づいてきたので、
里子たち二人はラウンジの奥にあるシャワーを使い、
少し楽なワンピースに着替えることにした。

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華子が一緒にというので、
二人でふざけながらお互いの身体をソープで包み合った。
日本人離れした華子のグラマラスな裸体は、
白人から見れば少女のような身体つきの里子には羨ましくもあったが、
砲弾のような巨大な乳房はさぞや重たいだろうと、
同性の里子には少し気の毒にも感じられた。

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「ラウンジにいる時から濡れていたの。
だって、舟木さん。初体験の相手だし、その後も時々…。」

身体を後ろから抱きしめきて、
悪戯に里子の乳首をころころと触りながら、熱い息で華子はそう囁くと、
ソープに濡れた女唇を二本の細い指でなぞり、
里子に甘い声を上げさせた。

ビジネスクラスのサービスで優先的に搭乗した四人だったが、
華子の提案で里子の隣には左近が座ることになった。
嫌ではなかった。
ラウンジでの談笑の間、
左近は少しだけ控えめで、
それでいて時折気の利いた話題を選んでくれていた。
チケットでは通路側であった里子を窓際に譲ってくれ、
ドリンクサービスの時も、小まめに気を使ってくれた。
忙しくて彼女もいないという話はきっと嘘だと思えたし、
本当だとも思えた。

華子の父親が二人に工面してくれた株主優待でのビジネスクラスは、
休むときはフラットに近くなる、
今流行の簡易のシェルタイプのシートでその快適さに驚いた。

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離陸して暫くすると、早目の機内食が運ばれてきた。
日本の航空会社のビジネスクラスの食事は、
日本人向きの味付けであるのも楽しみなひとつである。

前の席にいる華子は、
小振りのフォークに挿したシャロットを、
舟木の口に運んであげていたし、
里子には少し多すぎると思えた銀ひらすのグリルの半分と、
左近の和栗のモンブランを笑顔の中で交換していた。
二人ともハワイには勉強をしに行くというのに、
これではまるで新婚旅行のようだわ。
里子は心の中でそう微笑んだ。

ビジネスクラスは季節がら混んでいると思っていたが、
里子と左近のいる横には誰も座ってはいなかった。
ファーストクラスやエコノミークラスの対応のためか、
食事のトレイが引かれた後のビジネスクラスは、
ベテランのCA数人だけらしい。

時折、舟木と里子の顔が随分と近づいていることが後ろの席から垣間見えた。
高校時代からワンダーフォーゲル部に在籍し、
大学では本格的に雪と岩に挑戦していたと言う左近は、
タブレットを出してそれらの山行で撮った雪山や花を見せてくれた。
父親も登山をしている里子には、知っている山もあったし、
初めて見るような可愛らしい花もあった。
登山を続けているという割には、
里子に説明をしてくれている左近の横顔には、
なぜか幼さも残るような気もしたが、素敵にも思える。

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暫く小声で談笑していたが、
機内の照明が少しだけ落とされた。
窓の外には紫紺の夜空を背景に、瞬く沢山の星たちの様子が伺え、
里子はその美しい景色に、少しの時間見とれる時間を過ごしていた。

暫くの間、まどろんでいた気がしたが、
薄墨色の機内に、微かな曇ったような音が聞こえたような気がした。
その音が前の席から聞こえてくる華子の声だと分かるまで、
暫く時間がかかった。
どんな時にそんな声を出すのか、女の自分にはわかるような気がしたが、
左近が里子の手に触れ、軽く目くばせをしてきた。
気が付かない振りをするつもりだったが、上手くいかなかったようだ。

何度かその微かな声と息遣いは聞こえていたが、
ビジネスクラス後方のバーカウンターにでも行くのだろうか、
ゆっくりと二人は立ち上がると里子たちの横をすり抜ける。

僅かに触れていた左近の手は、
はっきりと里子の手を包み何かしら意味ありげに握り絞めてくると、
自分の掌にあるものを里子に触れさせ、そして、驚かせた。
つるつるとした表面の四角いものは、
確かめるまでもなく、男女が性行為のときに使うスキンだったのだ。

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はっとして、顔を上げた里子のあごをすくうようにして、
その唇に左近の唇が触れてくる。
拒むことはできたはずなのに、なぜか、そうしなかった。
舌先が里子の濡れた唇をなぞると優しく押し広げ、
可愛らしい舌先を探しだした。
驚きのまま息を弾ませて受け入れた里子は、
自分でもなぜかわからなぬままに、瞼を閉じていた。

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戻ってきたと気付かなかった華子の姿が、
左近の肩越しに見えた。

「先に、済ませてきたわ。CAはお疲れのようよ。」

掠れた声といくらか乱れた髪が、
舟木との時間の濃密さを里子に教えることになった。

左近に促されるように手を引かれ、
乗務員用のシートで仮眠をとっているCAの目を盗むと、
慌てることもなくパウダールームに連れ込まれた。
普通の飛行機のとは違って、
ゆったりとしているその広さと、
美しく淡い光を注ぐ、
茜色のルームライトに驚く余裕は僅かながらあった。

左近は改めて里子を抱きしめると改めてその唇を楽しんだ。
あんなに紳士だったのに、
と、そう葵が思う間もなく、
全身をも映せるだろう広い鏡の前で後ろ向きにされると、
薄いドレスの裾をたくしあげられ、殆ど同時に下着を下ろされた。
余りの手際の良さに、ただ、されるがままだった。

彼の情熱を迎え入れるには、
自分のものにまだ潤いが足りないとも思ったが、
左近の熱いものは的確に里子の秘唇を探し当て、
いやらしい腰つきでゆっくりとした突き上げを始める。

「かんにんして。」

そう言おうとしたのに、
左近の太い部分から女のものを少しずつ押し開かれると、
後は奥から湧き出してきた愛液が、
二人の身体がひとつになることを助け、
里子は甘い声を上げておとがいを仰け反らせた。
左近の逞しいものが、二度三度の動きの中で里子の一番奥に届いたからだ。

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「君が素敵たから。」

鏡に映る自分の後ろでは、
今しっかりと身体を繋げた左近の舌が里子の首筋を這う。
薄緑色の貝の前ボタンを外されたワンピースは、
両肩から落とされ、
何も隠すものがない乳房には両手がかぶさり、
彼の気持ちが求めるがままにゆるやかに揉みほぐされていた。

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わずかばかりのカウンターに手をついて、左近の動きに耐えたが、
そのカウンターには二人が繋がる時に彼が置いたのだろう、
破られたスキンの袋がいつの間にか光っている。

出会って僅かの時間だというのに。
勉強をするために行くその旅の途中だというのに。

桂一は今の自分の浅ましい姿見てどう思うだろうか。
永い身体の関係が続いているし、
彼以外の男性にも身体を開いたことも幾度もあった。
けれど、こんな思わぬなりゆきの中で、
そして、拒むことなく左近のものを受け入れている自分に、
里子は自分の肉欲の深さを思い知らされていたのだった。

やがて、
動きを早めた左近のものが自分の中でそれまで以上に大きく膨らみ、
耐え切れないような曇った声をあげた左近と同時に、
激しい喜びに身体を打ち振るわせた里子も、
上手にタイミングを合わせ、登り詰めていったのだった。


15:36  |  「幸せの行方」  |  Trackback(0)  |  Comment(3)
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