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「幸せの行方」 その3 身ごもる場所 

2009.06.07 (Sun)


●学会

秋が少しずつ深まっていた。
日本海の色と風が冬のそれに変わっていたし、
東の山々には白いものを見ることが出来るようになっていた。

あれから平穏な時間が流れていた。
毎日夫を見送った後順子は家事と習い事に勤しんだ。
付き合いで遅くなることもあったが、
趣向を凝らした手料理を、
夫はいつも楽しみにしてくれていた。

愛されていることを、妻として実感できる毎日であった。
幸せな日々を遮るものは、日々の中で感じることはなかった。

慶彦は今夜のように時折家族で訪れて来た。
当然のように、なんのわだかまりも無い穏やかな表情の慶彦は、
良い夫であり、良い父親であった。
子どもたちはテレビの前のカーペットに座って、ビデオを見ていた。
手には順子が用意していたお菓子を、大事そうに持っている。
大人たちのテーブルの上には、
二本目のワインがピッチャーの中で揺れていた。

来週からハワイでの学会に出席するため、
二十日ほど日本を離れることを雅彦が話し始めた。
順子は数日前その話を聞いている。
そんなに長い間一人で居る事は結婚以来無かったことで、
実家に帰ることも考えたが、
習い事のレッスンや発表会が続くので、
大人しく留守番をすることにしていた。
順子が寂しいだろうから、その間たまには今夜のように、
皆で遊びに来て欲しい旨を雅彦は頼んでいた。

下の子が大きな欠伸をしてこちらを見た。
子どもたちには、少し遅い時間になろうとしている。
静子は子どもたちに洗面をさせ、挨拶を言わせると、
二階のゲストルームに二人を連れて上がって行った。

「慶彦、頼んだよ。」
雅彦は一言そう言うと、ワインのグラスを傾けた。
軽い目眩を感じた順子は、視線を落とし目を閉じるしかなかったのだった。

●玄関

早朝の飛行機に乗る夫を、玄関先から見送った順子だったが、
それから、何時間も経たない同じ玄関で、
慶彦に抱きしめられながら、身体を悶えさせていた。
溢れるような唾液を啜り合いながら、
どちらも同じように情感に身を任せたまま、
お互いの背中に手を回し、唇と舌を長い時間求め合っていた。

前を開かれたブラウスから、
白い乳房がこぼれ出ると、
唾液で濡れた慶彦の唇が、
もう既に固くなっていた乳首をつきとめ、強く吸い付いてきた。
上手に舌を使われ始めたのと同時に、
順子の身体の芯に快感が広がりはじめ、
間もなく奥が蜜で潤い始めたことがわかった。

この前は 良き夫として、良き父親として
ここに来ていたのに。

抱きしめたまま、リビングに敷いてあるカーペットに寝かせると、
ここでは嫌だという順子の言葉を無視するかのように、
身体を合わせる準備を始めていた。
ブラウスもスカートも身に着けたままだったが、
下着を抜かれた両足の間に慶彦の逞しい腰が分け入り、
驚くように熱い肉先が的確に押し入ろうとしていた。
迎えるにはもう少しだけ潤う時間が欲しかった。
けれど、慶彦のこれ以上はないように固くなったものが、
容赦なく突き進んで来た。
僅かに痛みが走ったが、
それは、自分を求めてくれる気持ちの高ぶりだとも思え、
仕方のないことだとも思えた。
幸い二人のものから滲むものが間に合い、
慶彦のものは、根元まで見事に飲み込まれ、
順子は一瞬息を止めるしかなかった。
彼しか行けない、最も深い奥まで辿り着いていたからだ。
何時もそうだ。夫以外の男のものを、受け入れる興奮からだろうか、
最初の一突きで、
短くも鋭い喜びに押し上げられる。
順子は胸を大きくのけぞらせ、上り詰めることを慶彦に告げると、
激しい襲った高まりに、身も心も任せてきっていた。

●身ごもる場所

兄の留守に、その家のリビングで兄嫁と繋がっている自分に
慶彦自身も興奮を抑え切れなかったのだろう、
順子に二度目の喜びの声を上げさせると同時に、
あえなく自分を解き放っていた。

兄の出張の話を聞いたときから、
この時を我慢できないで待っていた。
順子のことが堪らなく恋しかったし、
妻を抱いている時でも、心はそこに無かった。
兄嫁の美しい身体に溺れている自分を自覚していたのだった。

夫の知らない身体の一番奥で、慶彦が大きく膨らみ、
大切な液が、自分の中に注ぎ込まれていることがわかった。
彼の噴出と同時に身体が上手に収縮を始め、
その高まりのなかで、
自分の身体が今一番大切な周期の中にあることを意識し、
身体の奥が温かいもので満たされることを自覚させられると、
ためらうことなく慶彦の腰を引き寄せていた。

庭に来ている鳥たちのさえずりが聞こえるように、
二人の呼吸も落ち着きを取り戻し、穏やかになった。

身体を離さないように頼み自然に膝を曲げるようにして、
繋がりを更に深くしようとした。
よくは分からなかったが、
少しでもたくさんの液が身体の奥に流れ込んでもらいたかったし、
少しでも長く身体の奥に留まっていてもらいたかった。
自分のものは充分に熟しているように思える。
後は慶彦のものが、捕まえてくれるだけだと感じた。

長いこと身体を繋ぎ合わせてた後、
いくらかの抵抗を感じながら二階の寝室へ慶彦を誘った。
そこは愛している夫との大切な営みの場所でもあったが、
この家の赤ちゃんを身ごもる場所とすれば、
それは、なによりふさわしいところだとも思えた。

階段の途中で、あっと小さな声を上げた。
残念なことに身体からこぼれた出たものが、
つうーと太股の内側を伝たったからだ。

寝室に入ると、何かしら良いにおいを感じ、
強い興奮に奮い立った慶彦は、
厚手のカーテンを閉じようとする順子に、
レースにして欲しいと言って困らせていた。

ベッドに横になった二人の身体には何も隠すものがなかった。
慶彦からの口づけだけで、順子のものは瞬時に再び潤ったが、
背後からの誘いを嫌がり、なぜだか普通に抱いてくれるように誘った。
身体の中に入ってきた慶彦のものは、
あれだけ、沢山の愛の液を出してくれたというのに、
初めと同じ硬さと太さであることを、嫌というほど順子に教え翻弄し続けた。

どれだけ抱かれ続けているのか、分からなくなっていた。
夕暮れが近いのかもしれないと思えたが、
カーテン越しの空の色は、そのことを教えてはくれなかった。

自分の身体が揺れ始めていることに気が付き、
ぼんやりと意識が戻ってきた。
「もう駄目よ。身体に悪いわ。」
そう言ってみたものの、
迎えるようにうねる自分の腰に、
説得力はないことはわかっていた。

三度目のおびただしい愛を受けた瞬間、
順子は息も絶え絶えの中で、
「きっと生まれるわ。二人の赤ちゃんが」
と 涙声で叫び、
慶彦の背に爪を立てながら上り詰めていったのである。
16:47  |  「幸せの行方」  |  Trackback(0)  |  Comment(0)
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